ドライアイについて
涙は99%の水(水層)と1%の脂(油層)からなっており、そのどちらが足りなくなっても、ドライアイの症状を引き起こします。
水が足りないタイプ・・・加齢やシェーグレン症候群などにより、涙腺の機能が低下することで起こります。
治療法
水分の補充のために、ヒアルロン酸ナトリウムやジクアホソルナトリウム、レバミピドの点眼を行います。症状に応じて、涙がたまるように涙点プラグを挿入することもあります。
脂が足りないタイプ・・・
涙の成分のほとんどは水分なのですが、その水分が蒸発しないように表面に油の層が存在しています。その油を分泌しているのがまぶたの中にあるマイボーム腺です。マイボーム腺の機能が低下すると、涙の中の脂が減少しドライアイを引き起こします。最近の研究では、ドライアイの原因として、この脂が足りなくなるタイプが大部分をしめていることが分かりました。この、マイボーム腺の機能が低下した状態をマイボーム腺機能不全(Meibomian Gland Dysfunction、MGD)といいます。
マイボーム腺機能不全(MGD)の治療法
日々のケア
- 温罨法(おんあんぽう)
- ホットアイマスクで目の周囲を温めることで、マイボーム腺につまっている脂をとかす、まぶた周囲の血流が良くなる効果があります。
- 眼瞼清拭
(がんけんせいしき、リッドハイジーン) - まぶたをしっかり洗い清潔に保つことです。かたまってしまった脂や角化物の除去、マイボーム腺周囲の細菌を減らす効果があります。アイシャンプーを用いて洗うとより効果的です。
点眼治療
アジマイシンというマクロライド系の抗菌点眼薬を処方します。点眼回数・期間が細かく決まっていますので、必ず処方通りに点眼してください。ただし点眼治療のみでは改善は難しく、温罨法・リッドハイジーンやIPL治療と併用することをすすめています。
IPL(Intense Pulsed Light)治療
当院ではドライアイの治療に関し、ルミナス社のM22 IPLシステムという最新機器を用いたIPL(Intense Pulse Light)治療を行っています。この機器はFDA(アメリカ食品医薬品局)においてマイボーム腺機能不全に関連するドライアイ治療として適応承認されている治療器です。さらに2023年6月23日、厚労省においてマイボーム腺機能不全(MGD)の治療に対する適応承認されました。
IPL治療は光を利用した治療法で、皮膚に有害な波長を取り除き、治療に必要な波(400〜1,200 nm)だけを選択して、カメラのフラッシュのように瞼の周囲の皮膚に向け光を照射するというものです。これにより毛細血管に刺激を与え、余剰な脂質を溶かし、マイボーム腺の詰まりを除去。マイボーム腺の機能を回復させ、正常な涙液が分泌されるようにすることで、ドライアイの改善を図ります。血管病変の治療として美容領域では長年使用されてきました。IPLにより、MGD・ドライアイ症状の改善が報告されています。
また、ドライアイの原因のひとつとして、毛根や皮脂腺などヒトの皮膚に生息しているデモデックスという寄生虫(顔ダニとも呼ばれています)が挙げられます。このダニがまつげに大量に繁殖すると、眼瞼炎やドライアイなどの合併症を引き起こします。IPL治療は、このダニの抑制にも効果があることがわかっています。
IPLによるMGDへの効果
- 熱によりマイボーム腺のつまりを溶かす
- 炎症を抑える
- 異常血管の退縮
- デモデックス(顔ダニ)を減少させる
- 肌のコラーゲンを再生する
実際の施術
- 洗顔をして、お化粧を落とす
- 当てる部分にジェルを塗り、眼球を保護するアイシールドをつける
- IPLをあてる
- マイボーム腺を圧出し、お化粧や日焼け止めを塗って終了です
治療後の注意事項(副作用等)
- 当日は日焼け止めをご持参いただき、帰宅時に塗布していただきます。
- 洗顔、入浴、メイクなどの日常生活の制限はとくにありません。
- 治療後2週間程度は、日焼け止めを塗るようにしましょう。
- 治療後、皮膚に赤みを帯びる場合がありますが、多くは2~3時間で元に戻ります。
- 皮膚の弱い方ですと、赤みやヒリヒリとした感覚がしばらく続くことがあります。
- 目の充血、日光に対する過敏な反応、強い眼精疲労などの症状がみられた場合は、速やかに医師にご相談ください。
- 帰宅時は、持参して頂いた日焼止めを塗って帰宅して頂けます。
回数
1度の照射では効果を感じられないことがあり、3~4週間毎に合計4回行うことを推奨しています。4回目以降は、1年に1~2回はメンテンナンスにご来院ください。
IPL治療(ドライアイ)の費用
- 1回照射
- 7,000円(税抜)
- 4回1セット照射
- 25,000円(税抜)
- 治療費用は自由診療のため、全額自己負担です。健康保険の対象外となります。
- 1回の照射費用には検査費、診察費を含みます。
- 投薬が必要な場合や他の検査が必要な場合などは上記以外に別途自己負担が必要です。
切除しない霰粒腫(マイボーム腺機能不全が原因)に対するIPL治療
霰粒腫とは、まぶたの脂腺(マイボーム腺やツァイス腺)の閉塞による非感染性肉芽腫性炎症で、通常は痛みや発赤は伴いません。瞼板の中にしこりをふれます。発症にはマイボーム腺機能不全が関与しているといわれています。当院ではなるべく切除しない霰粒腫治療を目指しております。
- 霰粒腫の初期や感染を伴った場合は、発赤・痛みを伴うことがあります。
- 霰粒腫以外の病気(脂腺癌など)が疑われた場合は切除が必要になります。
治療
- ① 切除:術後目が腫れる、隣接する正常なマイボーム腺も切除してしまう可能性がある。
- ② ステロイド点眼・軟膏
- ③ ステロイド注射:切除と同等の治療効果がある、とされている。
- ④ マイボーム腺機能不全の治療:温庵法、リッドハイジーン、IPL(Intense Pulsed Light)
IPLのマイボーム腺機能不全に対する効果
酸化ヘモグロビンとメラニンに反応する光エネルギーにより、照射部位周囲の温度が上昇
- マイボーム腺につまっている脂が融解し、閉塞解除
- 抗炎症作用
- 異常血管の凝固
マイボーム腺の働きが改善することで、切除することなしに霰粒腫の退縮が期待できます。
マイボーム腺に対するIPL治療の施術費用
- 1回
- 7,000円(税抜)